対(つい)になる磁石を用いた商品開発において、過去のお客様が実用新案で特許と同等の評価(評価6)を得た「磁石付き装飾体」というのがあります(下図:実用新案登録第3206226号「磁石付き装飾体」。株式会社エイコー)。
好きなキャラクターの人形を、洋服の肩やカバンに穴をあけることなく磁石で付けられるという商品なのですが、磁石ってオモテとウラがありますよね。N極とS極。
磁石で付ける時に迷ってしまうとユーザーにストレスを与えてしまうので、それを解消するという課題が生じました。
実は、工場で人形に磁石を埋め込むとき、S極かN極のどちらを外側にするかと一つずつ注意を払うことは大変で、時間もコストもかかってしまうのだそうです。
しかし、一つのアイディアによって人形の製造過程のスピードを格段に速くすることができました。
そのアイディアはとてもシンプルで、「対となる固定用の磁石に付けるカバーの表と裏のデザインを変えた」というもの。
固定用の磁石のカバーを、利用者が一度利用すればどちらの面が接着面かを判別して覚えることができるようなデザインにしました。ですから、工場で判別する必要がなくなるのです。
これにより、製造過程では極性を考慮することなく人形に磁石を埋め込むことができるようになり、磁石の極性を1つずつ確認することの煩雑さが解消されたのです。
ユーザーとしては、磁石の裏表については最初の一回迷うだけで、しかもその確率は50%。それが大きな負担となって商品販売に歯止めがかかるというものではありませんから、結果としてこのアイディアは製造コストを下げるという素晴らしい成果を生み出したということですね。
ユーザー寄りになって商品を開発することでコストを上げるよりも、負担とならない一手間をユーザー側に頼りつつ価格を下げる方が、ビジネス戦略としては正しかった、ということです。
まさに磁石が利益を引き寄せた、素晴らしいアイディアですね(笑)。