開発マネージメントのポイントは、技術者の問題意識に方向付けをすることです。技術者の問題意識が目的の方向に集中すれば、開発効率は飛躍的に向上します。
開発部長と技術者が、こんな会話をしています……。
開発部長:例の開発テーマの進捗状況はどうなっている。
技 術 者:今やっています。もう少し待ってください。」
開発部長「そうか。計画よりもちょっと遅れいているので、がんばってくれ。」
このやり取りでは、技術者は何をがんばれば良いのか、開発部長からは何も伝わってきません。これでは開発部長のマネージメント能力が疑われます。
開発の成果が問われるとはいえ、成果を求めて「がんばる」ように指示したところで、そのプロセスでの評価はできないのです。
また、若い技術者の中には、具体的な指示がないと自分が何をすればよいのかわからない人が少なくありません。
「方向性×量」を指示する
ではもしこの技術者が、「現在はここまで進んでいます。その過程で、特許出願を3件出しています」と答えるようになったらどうでしょうか。
開発部長は、出願された特許の内容と件数を見ながら、いろいろな対策が立てられるようになるでしょう。
そのためにも、若い技術者に対して「この分野に、特許を何件出しなさい」という具体的な指示を与えて、取り組み方に方向付けをすることが開発マネージメントのポイントになります。
「とにかく特許を出さなければ」と考える技術者は、決められた方向性に問題意識を持つようになります。「方向性×量」という考え方は、技術者に開発の方向性を示すというメリットがあるのです。
特許のすばらしいところは、開発のプロセスや技術者の問題意識を「出願件数」という数値で評価できることです。また、重要なテーマに出願件数が足りなければ、それをどうするか、具体的な対策も考えられるようになります。
同時に、その開発テーマにおけるライバル車の出願状況を数字で確認することもできます。自社の出願件数とライバルの出願件数を対して、戦略を考えることもできるようになります。
出願件数の管理を経営に活かす
自社の特許出願件数の管理は、いろいろなところで、経営に活かされるべきです。
自社とライバル社の、開発に関わっている人数と出願件数を比べてみると、開発効率が見えてきます。人数が同じで出願件数が少ない方が、開発効率が悪いということがわかります。
もちろん特許の出願件数だけで全てを評価できないのは当たり前です。とはいえ、技術戦略というのはなかなか定量的に表示できないもの。
「特許出願件数」を上手に経営に使うならば、定量的な技術戦略管理が可能になります。
そしてその鍵を握るのが、開発部長がどのように技術者に開発の方向性を与えるか、ということになります。
「がんばって」から一歩進んでみましょう。