特許権は、その置かれている立場によって価値が異なると言えます。特許権の価値を評価する際には、「〜の場合には」という条件を付けなければいけないのです。
例えばX社が以下の条件下で、商品Aとについて特許権を取ったとしましょう。
①X社は販売力が業界トップ
②この特許製品AがX社の1番の売れ筋商品
③この製品Aのマーケットシェアも業界1位
この場合、特許侵害もなく、平穏無事なこの特許権Aは、十分価値が高いと言えます。市場での優位性を確保しているX社にとって長期的に有利だから。
特許権の脅威を感じているライバル社が、同マーケットに参入してこないので、業界トップの販売力を利用してさらにマーケットシェアを伸ばせます。最終的には市場の独占さえも可能になります。
侵害品が出てこないということは、つまり、ライバル社が参入を差し控えていると考えるべきです。こうした状況下では、特許を活用した市場対策を怠ってはなりません。
しかし、①の条件が異なり、X社に販売力がほとんどない場合、侵害品が出てくる特許を取得した方が、価値が高くなります。ロイヤリティ収入を見込んだ方が利益が大きいから。
つまり、販売力が強い企業であれば、侵害品が現れないマーケット独占を目指した特許戦略、販売力がない企業であればロイヤリティ収入を見込んだ特許戦略というのが必要になってくるというわけです。