市場はいつから「ユーザー優位」になってしまったのか

知的財産戦略を考えるためには、情報化社会における「市場優位社会」というものを理解しておかなければなりません。

情報化社会は製造業を相対的に弱体化させ、ユーザー(すなわち市場)が絶対的な力を持つ「市場優位」の社会をもたらしました。

今まで製造業が握っていた情報の主導権が、市場であるユーザーに奪われたのです。

これは、1970年代と2008年の原油高騰時の状況を比較すると分かりやすいと思います。

 

「メーカー優位」から「ユーザー優位」への転換期

1970年代の原油高騰時に、製造業は千歳一隅のチャンスとばかりに商品の値上げに走りました。

この年代は「3C時代」などと言われ、自動車、カラーテレビ、クーラーがもてはやされ、メーカーの力がユーザーの力を上回っていたのです。

ですから、原油の高騰とともに商品を値上げできました。

しかし、2008年の原油高騰時に、製造業は原油価格の高騰を商品価格に転嫁できませんでした。

それは、単にデフレだけの影響ではありません。

最も大きな原因は、製造業よりもユーザーの力が圧倒的に強くなり、製造業がユーザーに従わざるを得なかったことです。

これからも市場の力は強くなり、その分、製造業の力が相対的に弱くなります。これは情報化社会の必然と言えるでしょう。

なぜなら、どのような商品がどこでどのように作られ、それがいくらで売られているかという情報が市場に氾濫し、市場はもはや製造業の言いなりにならないからです。

絶対的な力を持つ市場の力は、川下から川上に流れ、市場が価値ありと認めてくれなければ小売りの段階で商品が売れず、行き詰った状態になります。

この状態は、結果的に川上産業にまで波及していき、すべての産業が市場の洗礼を受けることになります。

 

技術力があっても優位になれるとは限らない

市場優位の社会では、技術力が勝っているからといって、市場で勝てるとは限りません。

例えば、世界のトップ企業であるサムスン電子ですが、サムスン電子の元常務である吉川良三氏は「サムスンが製品を生み出すプロセスの中には、基礎研究をともなった独自の新製品を生み出すプロセスがありません」とおっしゃっています。

サムスン電子では日本などが開発した先端的な商品をキャッチアップして徹底的に分析するとともに、それを単にコピーするだけでなく、例えば新興国の事情にあったものに作り変えています。

ただし新興国の市場を生半可ではなく徹底的に調査分析しているとのことです。

しかも日本企業がこだわる高機能高品質をどの程度まで落とせるのか、新興国の市場で受け入れられる低コストにどの程度対応できるのかを、分析して商品を作り上げているようです。

私は、サムスン電子のやり方が正しいと言うつもりはありません。

しかし、市場を無視して企業の価値観を押し付けようとすると、必ず市場からしっぺ返しを受けると言いたいのです。

 

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